川崎市市民ミュージアムでは、今年で3回目となる映像ワークショップ「さわれるシネマ」を開催しました。
今回は、ビデオカメラやスマートフォンが普及する前に使われていた8ミリフィルムカメラを使った撮影と現像を体験する2日間にわたるワークショップ!
会場の大山街道ふるさと館では、企画展「昔のくらしと道具たち ―衣・食・住の移り変わり―」を市民ミュージアム主催で開催していましたが、その関連イベントとして実施しました。
講師の先生は、映像作家の石川亮先生と美術作家の南俊輔先生です。
▲右:石川亮先生 左:南俊輔先生
【ワークショップ詳細】
日程:2023年8月6日(日)・11日(金・祝)
会場:大山街道ふるさと館 3階会議室
参加者数:各日16名
【8月6日(日):1日目】
親子での参加ですが、小学生や中学生のみなさんはもちろん、保護者の方も8ミリフィルムカメラでの撮影経験はゼロ!
講師の先生に詳しく操作方法を教えてもらいます。
▲映画フィルムに初めて触れた参加者がほとんど!
▲8ミリフィルムカメラを構える姿が様になっています
今回使用するフィルムは3分20秒間を撮影することができます。
まずは3秒間のテスト撮影を行いました。
テスト撮影では、スマホのように撮影した映像をその場で確認することはできません。きちんと撮れたかどうかは2日目に現像するまでのお楽しみです。
ビデオカメラやスマホは自動でピントを合わせてくれますが、8ミリフィルムカメラは手動でピントを合わせます。
メジャーで距離を測ってピントが合うように調整するのです。ピントがあったら撮影開始!
▲テスト撮影では、お父さんやお母さんを試し撮り!
ワークショップ終了後、参加者にカメラとフィルムを持ち帰ってもらい、おうちやお出かけ先で残りのフィルムを撮影していただきました。
【8月11日(金・祝):2日目】
いよいよ現像の日です!
▲撮影してきたフィルムをチェックしています
8月11日までの4日間、参加者の皆さんには夏休みの思い出を撮影してきてもらいました。
いったいどんな映像がフィルムに現れるのでしょうか?
2日目は9組の参加者を午前・午後の2回に分けて現像を行いました。
今回は「Kodak TRI-X」というモノクロリバーサルフィルムを使用しました。
フィルムを現像するために、ドライウエル、現像液、漂白液、定着液という薬品を使います。
▲現像にはたくさんの薬品を使用します(左から、ドライウエル、現像液、漂白液)
まずは、フィルムをカートリッジから取り出します。
この時にフィルムが光に当たってしまうと感光して真っ白の画像になってしまうので、ダークバックという袋の中で
フィルムを引き出していきます。
▲手の感覚だけを頼りに、カートリッジからおよそ15mのフィルムを引き抜きます
現像の仕組みを詳しくご説明しましょう。
① 撮 影:撮影する時に、フィルムの乳剤が光を吸収して像を作る(感光)
② 第一現像:感光した乳剤の像(ハロゲン化銀)を薬品で金属銀に変化させる
※この時、画像は白黒が反転したネガ画像になっています
③ 脱銀・漂白:②で変化した像(金属銀)を漂白液で溶かして除去する
④ 露 光:撮影時に感光しなかった乳剤(像以外の部分)に光を吸収させる
⑤ 第二現像:④で感光した像(ハロゲン化銀)を金属銀に変化させる
※この時、画像はネガ画像が反転したポジ画像になります
⑥ 定 着:残ったハロゲン化銀を除去して、フィルムに硬い膜を作る
②第一現像(水洗)→③脱銀・漂白(水洗)→④露光→⑤第二現像(水洗)→⑥定着(水洗)と工程ごとに薬品を変えて処理を進めていきます。
▲タンクの中にフィルムを詰めて、その中に薬品を注いでいきます
▲現像にむらが出ないように一生懸命にタンクを振っています!
現像を進めていくと、フィルムに画像が現れてきました!
参加者の皆さんから喜びの声が上がります。
乾燥させているフィルムのコマに画像が現れているのがみえますね。
▲青空を背景にフィルムを乾燥中… | ▲浮かび上がった像が透けて見えます |
フィルムが乾燥するまでの間、透明のフィルムにペンで直接絵を描いたり、針で引っかいたりしてオープニングと
エンドクレジットを描きます。
スプライサーというフィルムを編集するための道具をつかって、オープニングとエンドクレジットのフィルムを本編の
フィルムにつなげます。
▲親子で編集作業に熱中!
2日目のワークショップが始まって、3時間…
作品が完成しました。さっそくフィルムを映すための映写機を使って投影してみましょう!
映写機にかけたフィルムが回転する音が響いて、スクリーンの上にみなさんの映像が浮かびます。
どの作品もきちんと撮影・現像ができていました。
▲昔に撮影したようにも見える映像なのに、新しい生活の道具が映りこんでいて不思議な気持ちになりますね
完成したフィルムはデジタル化をして、DVDとして参加者の皆さんにお送りしました。
もちろん、8ミリフィルムもお返しします。
▲フィルム保管用の丸い缶にタイトルのラベルを貼ります
8ミリフィルムの歴史は古く、1932年に発売されました。1965年に扱いが簡単なカートリッジ式のフィルムが発売されると、多くの家庭で家族の思い出などを撮るために使われました。
90年前から続く撮影方法で記録した今回の皆さんの作品は、適切に保管すれば100年先でも見ることができるそうです。
参加者の皆さんが大人になった頃に、もう一度今回のフィルムを上映してみるのも思い出がよみがえって面白い体験になるかもしれませんね。
川崎市市民ミュージアムでは、このようなワークショップを不定期に開催しています。
市民ミュージアムは休館中ですが、川崎市内の各地にて会場をお借りして実施していますので、是非お気軽にご参加
ください。