2021年08月26日

【教育普及】ワークショップ「さわれるシネマ~フィルムでアニメーションをつくってみよう~」を開催しました

2021年8月1日に「さわれるシネマ~フィルムでアニメーションをつくってみよう~」と題したワークショップを開催しました。講師は長年「国立総合児童センターこどもの城」にて映像の教育普及事業を実施されてきた昼間行雄先生。当館が令和元年東日本台風の影響で休館中のため、今回は川崎市生涯学習プラザをお借りします。当日は午前18名と午後16名計34名の小学生から中学生の皆さんが参加されました。

今回のワークショップは、映画フィルムに直接絵を描いてアニメーションをつくる“ダイレクトペインティング”という手法の実践を通して、映像のしくみを学びながらオリジナルのアニメーション作品を制作するというものです。最後には映写機を使って作品の上映会をします。

まずは講師の昼間先生から映画の歴史やしくみについて学びます。
参加者の子ども達にとって、昔ながらの映画フィルムに触れるのはこれがはじめて。
興味津々に先生のお話を聞いていました。


▲世界で初めて映画が大衆に鑑賞されたのはフランスのカフェでのことだったそうです

19世紀、写真の技術を応用した動く写真の発明はいろいろな人が行っていました。1895年に、リュミエール兄弟が連続した写真をつなげて見ると目の残像効果で絵が動いて見えることを利用した装置、「シネマトグラフ」を発明。すると、これが大評判になります。このシネマトグラフを使って上映した日が現在の映画のはじまりとされています。


▲馬が走っている瞬間の写真をつなげると…

たくさんの写真をつなげて長い時間の映像を作るにはロール状のフィルムが適しているということで、考え出されたのが映画フィルムです。現在でも使われている国際的規格でもある35㎜フィルムを発明したのはあの有名なエジソン!実は先ほどのリュミエール兄弟のシネマトグラフにもこの35㎜フィルムが使われていたようです。

先生のお話のあとは、実際にフィルムに絵を描いてアニメーションをつくります。
通常、映画フィルムは1秒間に24コマの絵を映すことでなめらかな映像になります。今回は1秒5~6コマを目安に、5~6秒の作品を作ります。それでも描くコマは30コマ。35㎜フィルムの幅3.5㎝という小さなコマに描く細かい作業です。みんな頑張って!


▲まずはどんな動きにするか下書きをします


▲アニメーションになるよう少しずつ絵を動かして描きます

漫画とアニメーションは違うものです。漫画はコマごとにストーリーや場面が動いていきますが、映像であるアニメーションは前のコマと次のコマで絵を少しずつ動かしていく必要があります。(パラパラ漫画と同じ仕組みです)

描き終わった後、昼間先生がスプライサーという専用の機械で参加者のフィルムを繋げて、アニメーションが完成です!


▲スプライサーを使ってテープでフィルムを繋げています

手回し映写機で作品を上映してみましょう。
真っ暗な部屋にぼんやりとした縁取りで浮かび上がる映像、手回し映写機のカタカタという音には昔ながらの映写の雰囲気が感じられます。
今回は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のために参加者以外の方のワークショップの見学をお断りしていたのですが、ここでは保護者の皆さんも一緒に鑑賞しました。


▲大人も子どもたちも目が釘付け!

このほか、当館の収蔵品でもあるカナダの映像作家ノーマン・マクラレンの短編作品「めんどりの踊り」や「線と色の即興詩」もご紹介しました。
「めんどりの踊り」はフィルムに直接描画するダイレクトペインティングという手法を使用しており、今回のワークショップで体験したものと同じ手法が用いられています。

参加した子供たちからは「アニメづくりが楽しくて、時間がすぐに過ぎてしまった」「映画について学べた。またやりたい」「フィルムでアニメが作れるなんて夢のようだと思う」などと満足感がたっぷりの感想をいただきました。

さて、ワークショップが終わった後も職員の作業は続きます。
制作した作品を映写機がない環境でも見られるように、当館のデジタルスキャナーでフィルムに描かれたアニメーションをデジタル化するのです。


▲この機器は被災収蔵品レスキューにも使用しています

▶被災収蔵品レスキューの詳細はこちら


▼デジタル化した皆さんの作品はこちら!

デジタル化が進み、なかなか目にする機会が減ってしまった映画フィルム。
今回のワークショップを通して、映画フィルムに触れ、映写機を使ったアニメーション作品の鑑賞によって映画に対する関心を深めていただいたことで、身の回りにあふれている映画やテレビ、インターネットなどの映像を見る視点が少し変わったのではないかと思います。
川崎市市民ミュージアムでは今後もこのような講座やワークショップを開催してまいります。HPやSNSでも情報発信を続けていますのでどうぞご注目ください!

教育普及 安尾