紙は、新聞や書籍、リーフレットといった印刷物から、ノートやティッシュなどの日用品まで、私たちの生活のいたるところで使われています。これらの多くは機械で大量生産されている「洋紙」と呼ばれるものです。日本では、明治期に入って造られるようになりました。 一方、日本で伝統的に造られてきた紙もあります。大陸から伝来したとされ、その歴史は1000年以上と非常に長く、古くから様々な場面で使われてきました。例えば記録。私たちが、何百年も前の出来事を知ることができるのは、それを記した紙が現在まで残っているからです。また今年、新たな紙幣が発行されましたが、偽札が少ないと言われる日本の紙幣には、実は日本の伝統的な紙の製造技術のひとつが応用されています。 様々な用途をもつ日本の紙は、その美しさと強さから、日本画や木版画の用紙として、また、古い文書や美術作品の修復用紙としても、多くのひとに愛されてきました。本展では、当館の収蔵品や関連資料、専門家へのインタビューを通じて、紙を漉き上げてきた職人や彼らを支えた者たち、紙を好いて重用した画家たち、傷んだ紙を救おうとする修復家にスポットを当てていきます。
2024(令和6)年12月 川崎市市民ミュージアム
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