おわりに ―紙という言葉
日本の紙というと「和紙」という言葉が思い浮かぶ人も多いと思います。しかし本展では、ここまで「和紙」という言葉は使っていません。「紙」と表現してきました。「和紙」は明治期から作られ始めた「洋紙」に対する言葉として生まれた、とても新しい言葉です。
一方、それが指し示すものは、1500年も前から「紙」と呼ばれながら日本で造り続けられてきた、とても長い歴史を持っているものです。その長い歴史の中にはたくさんの、紙を漉くひと、好くひと、そして救うひとがいました。彼らのおかげで、私たちは平安時代の雅な物語にときめいたり、戦国時代の武将たちの勇ましさに感動したり、新たな表現に驚いたりすることができるのです。彼らは「紙」として製紙や作品制作、修復に取り組んできたはずです。
彼らを取り上げた本展「紙すくひと」。「和紙」ではなく「紙」と表現した理由はここにあります。