おわりに ―紙という言葉

「紙漉の村にて」水尾比呂志 『櫂』13号 櫂の会 1966年6月10日発行 より

作者の水尾比呂志(1930-2022)は、柳宗悦(1889-1961)に師事し、民藝運動を展開した人物。この詩は、水尾が紙漉きの取材のため出雲を訪れた際に作られた。冒頭に「かみ」と読む言葉がならぶ。

 日本の紙というと「和紙」という言葉が思い浮かぶ人も多いと思います。しかし本展では、ここまで「和紙」という言葉は使っていません。「紙」と表現してきました。「和紙」は明治期から作られ始めた「洋紙」に対する言葉として生まれた、とても新しい言葉です。

 一方、それが指し示すものは、1500年も前から「紙」と呼ばれながら日本で造り続けられてきた、とても長い歴史を持っているものです。その長い歴史の中にはたくさんの、紙を漉くひと、好くひと、そして救うひとがいました。彼らのおかげで、私たちは平安時代の雅な物語にときめいたり、戦国時代の武将たちの勇ましさに感動したり、新たな表現に驚いたりすることができるのです。彼らは「紙」として製紙や作品制作、修復に取り組んできたはずです。

 彼らを取り上げた本展「紙すくひと」。「和紙」ではなく「紙」と表現した理由はここにあります。

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