ごあいさつ
大島康幸は、動物の表皮を木彫で表現した「FAKE FUR」シリーズに代表される彫刻家です。モチーフとなった動物の頭部や手足は非常にリアルに彫り上げられていますが、胴体にあるはずの骨や肉の表現はありません。くたりとした表皮の襞やたるみが、そこにあるはずのかたちを観る者に喚起させます。「躍動感や疾走感を感じる、命を感じられるとしたら、それが彫刻といえるのではないか」(作家インタビューより/2022年12月19日 作家アトリエにて)と話す大島。大島の対象へのリアリティーは、眼に映ったままの姿形ではなく、彼のイメージの中にあるのです。
本展では「FAKE FUR」シリーズをはじめ、「時間の衣」、「始まり」の各シリーズを発表順に紹介いたします。いずれのシリーズも、対象が持っているはずの量塊は影をひそめ、身体やそれらが動いた時間が、一枚の布のように柔らかに、そして軽やかに彫り込まれています。そこから見えてくる大島の「リアル」とはどのようなものでしょうか。私たちそれぞれの「リアル」と比較しながら一緒に見ていきたいと思います。
本展を開催するにあたり、多大なるご協力をいただきました大島氏、その他関係各位に心よりお礼申し上げます。
2023年10月5日
川崎市市民ミュージアム