折元立身(1946-)は川崎市在住の現代美術家です。アーティストを志して1969年にアメリカに渡り、ニューヨークでは最先端の現代美術の動向に触れます。帰国後の1980年代以降は川崎を拠点に、パフォーマンスや写真、映像、ドローイング、オブジェなどの発表を続け、国際的な評価を高めてきました。
なかでも、顔にパンを巻き付けて街の中を歩く「パン人間」(1990-)のシリーズや、アルツハイマー症を患った自身の母親との日々を題材にした「アート・ママ」(1996-)、世界各地で地元住民を集めた「おばあさんのランチ」(2006-)といった作品が知られています。折元は身近な食材や道具、家族や旅先で出会った人々との交流をモティーフに、日常の中に存在する異物やひと同士のかかわり、自身の存在のありようを問いかけ続けてきました。
今回の新作パフォーマンス《ラーメンをかぶる》は、取り壊し予定の旧川崎市市民ミュージアムで行われました。災厄や老いといった逃れられない運命に向き合い、新たな境地を切り拓く作家の姿を紹介します。
本展を開催するにあたり、ご協力を賜りました折元立身氏、ART-MAMA FOUNDATION、深川雅文氏、東海大学ティーチングクオリフィケーションセンター、東海大学松前記念館、その他関係各位に心より御礼申し上げます。
2024年3月 川崎市市民ミュージアム