関係者コメントの記録「調布市武者小路実篤記念館 収蔵品レスキューに参加して」
調布市武者小路実篤記念館は加盟する全国美術館会議からの依頼を受け、2019年11月から2020年2月に参加しました。当館も平成17年9月に集中豪雨により浸水したことがあり、早い段階から活動に参加した背景には、カビの繁殖に追われながら資料を救出した経験を持つ当館のベテラン学芸員の後押しがありました。
当初携わったのは、押し流されて積み重なった美術品の救出でした。普段、作品は、額縁、袋、タトウ箱と何重にも守られていますが、現場ではそれが災いし、箱を持ち上げるとチャプンチャプンと音がし、水が抜けていないものもありました。箱から引き抜いて出すことができる筈の作品が、濡れてビクともせず、箱と袋を破いて取り出す作業を繰り返しました。
文化財を守るための収蔵庫や保存用品の気密性が水損やカビの進行に繋がっていることに戸惑いを覚えたと同時に、丁寧に作業しなければ作品を傷つけ、時間をかけすぎると他の作品を救出できない焦燥に駆られました。
当館と川崎市市民ミュージアムは車で30分ほどの距離に位置し、博物館施設としてはご近所です。人ごとではない気持ちを抱きながら毎回活動していましたが、今回参加した職員はこのような現場は未経験で、川崎市市民ミュージアムの方々をはじめ、全国から集った学芸員・専門家の皆様に多くのことを教えていただきました。この場をお借りし、御礼申し上げます。未曾有の災害が頻発する昨今、地域のネットワークで助け合える環境がより整っていくことを期待します。
奇しくも新型コロナウイルスの出現により展覧会が当たり前にできることの有り難さを実感しています。川崎市市民ミュージアムで展覧会を楽しむことができる日を心待ちにしつつ、微力ながら私たちにできることがあればお手伝いしていきたいと考えております。
(掲載写真:美術文芸分野のレスキューの様子 撮影:調布市武者小路実篤記念館)
調布市武者小路実篤記念館
石井めぐみ 佐藤杏 清水想史 佐々木優 鈴木愛乃
(文責、佐藤杏)
- 連載シリーズ
- 関係者コメントの記録
- タグ
- 調布市武者小路実篤記念館