関係者コメントの記録「神奈川県博物館協会」

協会では、東日本大震災後に独自の総合防災計画を立て、加盟館園間での災害時相互防災活動の要綱を作成して、これまで防災訓練を重ねてきました。そのような中、台風19号により浸水被害が発生したと、市民ミュージアムから協会に対し救援要請がありました。これを受け、早速に協会事務局を中心に救援体制を整え、近隣博物館による指定文化財の緊急レスキューに始まり、2019年11月28日から本格的な活動を開始しました。令和元年度で計32回のレスキューを行い、延べ207人の加盟館園の学芸員たちが参加しています。レスキューの主な対象は、考古・歴史・民俗資料でしたが、特に古文書や民具資料の収蔵庫からの搬出、そしてその後の洗浄などを中心に行いました。

当初は館内環境が劣悪であることから、参加者の健康被害が一番の課題でした。幸いにも館側で防護服やマスク、手袋などの装備品が用意されていたので、特に健康被害の報告もなく、作業を進めることができました。ただ作業を行う上で、その手順や方法を含め、指揮命令系統において問題点があった、というのが参加者からの率直な感想でした。当時は未曽有の被害のもと難しい問題もあったと思いますが、日々の作業で生じた課題を、なかなか次に活かせなかった面もあったように思います。

令和2年度は新型コロナウィルス感染症の影響や夏の猛暑もあり、協会としては4月以降レスキューへの参加を見送らざるを得ませんでした。やっと12月になり再開しましたが、年が明け再び緊急事態宣言が発出され参加が中止になるなど、なかなか思うように支援活動を進めることができないのが現状です。乾燥した古文書の解体・洗浄が主な作業ですが、その全体数を考えると途方もない時間が今後もかかるものと思います。少しでも早くコロナが収束し、協会としても活動を加速化できればと願うばかりです。

収蔵する資料は、川崎市民にとって大切な財産であり宝であることからも、川崎市および市民ミュージアムには最後の1点まで責任を持って、その復旧に努めていただければと思います。もちろん協会としても今後も救援活動を継続し、復旧に向けての一翼を担えればと考えています。

(掲載写真:古文書の選別作業)

神奈川県博物館協会 望月一樹(神奈川県立歴史博物館) 
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