関係者コメントの記録「一般社団法人全国美術館会議」

全国美術館会議は、2019年10月に東日本に記録的な豪雨をもたらした台風第19号の通過後に、美術館等の被災情報の収集にあたり、川崎市市民ミュージアムに浸水被害が発生していることを把握しました。そのため国立文化財機構などと連絡を取りながら情報収集を継続し、救援活動への準備にあたりました。私が収蔵庫エリアに入ったのは、被災から10日余りが経過し、収蔵庫エリアに臨時電源による照明が確保され、各室の全体状況が把握できるようになったタイミングでした。その時の印象は、ひとつの施設での収蔵資料の被災としては、少なくとも阪神淡路大震災以降では最大規模であること、その搬出と応急処置だけに限っても、途方もない時間と労力が必要となりそうだということでした。その後、被災資料レスキューのための準備が進められ、11月中旬には関係者による予備的作業と作業内容検討会議がありこれに参加しました。この時点で庫内と収蔵資料には大量のカビが発生しており、健康被害防止のために防護服とマスク、ゴーグルなどを着用しての作業は、参加者にかなりの負荷がかかることを実感しました。それ以降、本格的な作業が行われ、全国美術館会議としては延べ441人の参加者により、2020年3月まで美術資料の搬出と応急措置を中心に延べ67日の支援活動を実施しました。しかし、コロナウイルス感染症への対応のため4月以降は活動への参加を見合わせたままで今日に至っています。

2020年4月以降も市民ミュージアムのスタッフなどを中心に作業は続けられ、6月には収蔵庫内のすべての被災資料の搬出が終了したという報告がありました。困難な条件のもと、限られた期間のなかで約23万点という被災資料の搬出を終えることができたことには驚きを禁じ得ません。市民ミュージアムのスタッフの皆さんをはじめとして、関係者の方々の努力に心から敬意を表したいと思います。

収蔵庫からの搬出は終わったといえ、被災資料の応急措置や本格的な修復など、これからも膨大な作業が必要であると思われます。設置者である川崎市にはしかるべき対応を、またこの被災経験を全国の関係機関等が共有し、今後の防災と被災対応に役立てることができるよう必要な情報公開をお願いしておきたいです。

(掲載写真:防護服を着用して朝礼を行う様子)


一般社団法人 全国美術館会議 災害対策委員長・保存研究部会長
豊田市美術館 村田眞宏 
https://www.zenbi.jp/