3月女性史月間特集 Kawasaki FEMINIST FILM MONTH
概要
3月8日は「国際女性デー」です。ジェンダー間の平等と女性の権利と地位向上のために、1975年に国連により制定されました。
本特集では、映画史においてより豊かな映画表現を追求してきた女性作家を3つの特集に分けて紹介します。
上映日:2019年3月2日(土)~3月24日(日)の土日【全6日間】
※ただし3月9日(土)、3月10日(日)は休映
|特集1 ◆ マヤ・デレン特集
幼少期にキエフからアメリカへ亡命したマヤ・デレン(1917-1961)は、前衛芸術の系譜を継承しつつ、ダンスや文化人類学的関心から映像における身体表現を追求し、新たな表現方法を切り拓きました。その後のアメリカ実験映画に大きな影響を与えています。
本特集では、デレンの全映画作品と、数々の神話に包まれた彼女の人生を紐解くドキュメンタリーを上映します。
上映プログラム:『マヤ・デレン全映画作品』(全6作品)、『鏡の中のマヤ・デレン』
|特集2 ◆ アメリカ・インディペンデント映画特集
2つ目の特集では、インディペンデントな映画制作を通して、社会問題を前景化させた表現方法を模索した2人の監督に焦点をあてます。
70年代以降により広義なフェミニズムを求めたリジー・ボーデン(1958-)は、ニューヨークでゲリラ的に撮影を行い、5年の歳月を経て『ボーン・イン・フレイムズ』を完成させました。振付家やダンサー、映画監督、作家として活躍しているイヴォンヌ・レイナー(1934-)は、それまであまり表面化しなかったテーマを可視化させた『特権』を制作しました。
上映プログラム:『ボーン・イン・フレイムズ』(日本初公開)、『特権』
★「フェミニズム映画講座」開講!
日時:3月17日(日)『ボーン・イン・フレイムズ』上映後
講師:斉藤綾子(明治学院大学文学部教授)
|特集3 ◆ アニエス・ヴァルダ特集
最後の特集では、アニエス・ヴァルダ(1928-)を取り上げます。
ヴァルダは、ベルギーで生まれ第2次世界大戦中にフランスに渡り、写真家としてキャリアをスタートした後、その表現の場を映画まで拡げました。彼女はヌーヴェル・ヴァーグに先駆けて、従来の慣習に捉われない独創的な作品を発表し、50年代半ば以降にジャック・ドゥミやクリス・マルケルらとともに「セーヌ左岸派」の代表的な作家と称されました。現在も異彩を放つ存在であり続けているヴァルダの60年代の代表作2作と後年の作品を併せて上映します。
上映プログラム:『5時から7時までのクレオ』、『幸福(しあわせ)』、『ジャック・ドゥミの少年期』
【チケット販売時間/当日券のみ】
10:00~15:00(12:00~13:00は販売休止)
※定員270名(各回入れ替え制)、開場は15分前です。
※前売り券はありません。当日先着順での販売となります(満員の際は入場をお断りすることがあります)。
※作品によっては、フィルムの経年劣化により映像・音声の状態が鮮明でないものがございます。ご了承の上ご鑑賞いただきますようお願い申し上げます。
- 入場料金(1プログラムにつき)
- 一般600円
- 大学・高校生・65歳以上500円
- 小中学生400円
- 未就学児、障害者手帳等をお持ちの方及びその介護者無料
各種割引料金をご利用の方は、生徒手帳・学生証・障害者手帳など、証明できる書類等(原本)を必ずご提示ください。
【マヤ・デレン特集】マヤ・デレン全映画作品(6作品/計75分)
『午後の網目』©Re:Voir Video
- 上映日
- 2019年3月2日(土)11:00
2019年3月3日(日)11:00
※以下、全6作品すべて16mmフィルムでの上映です。
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●『午後の網目』 Meshes of the Afternoon
1943年/モノクロ/14分
共同監督:アレクサンダー・ハミッド 音楽:テイジ・イトー(1959年に追加)
出演:マヤ・デレン、アレクサンダー・ハミッド
無意識と現実が白昼夢のように混ざり合う幻想的作品。チェコからの亡命映像作家であったアレクサンダー・ハミッドと共作し、反復するイメージと象徴的モチーフを通して内面的世界を映像化した実験映画史における傑作。
●『陸地にて』 At Land
1944年/モノクロ/15分/サイレント
砂浜に打ち寄せられたデレン演じる女性が、流木を這い上がっていくとパーティー会場の長テーブルの上に辿りつく。滑らかなモンタージュによって夢のリアリティを追求した作品。
●『カメラのための振付けの研究』 A Study in Choreography for Camera
1945年/モノクロ/4分/サイレント
出演:タリー・ビーティ
ダンサーが森、アパート、美術館といった様々な空間の中を踊る。緻密に計算されたカメラの動きによって、ダンサーの振付けと映像表現を一体化させた作品。
●『変形された時間での儀礼』 Ritual in Transfigured Time
1946年/モノクロ/15分/サイレント
出演:リタ・クリスチアニ、ジャネット・コリンズ、アナイス・ニン、マヤ・デレン
アパートの部屋を行き来する女性たち。ダンサーによる身体表現とカメラワークの新たな関係を求め、無意識の世界と現実がダンサーの動きによって繋ぎ合わさる。
●『暴力についての瞑想』 Meditation on Violence
1948年/モノクロ/12分 音楽:中国の笛とハイチの太鼓、変調:マヤ・デレン
出演:チャオ・リ・チ
白い壁と黒い壁の前で太極拳を舞う中国武術の演者。野外と室内を行き来して繰り広げられる身体の振付けや、壁に映し出される影によって、東洋の観念的世界を描く。
●『夜の深み』 The Very Eye of Night
1952-59年/モノクロ/15分 音楽:テイジ・イトー
出演:アンソニー・チューダー指導下のメトロポリタン・オペラ・バレエ学校の生徒
戯れる身体の映像が重なり合い展開される神話的世界。明暗を反転させることによって、夜空に星が輝き、ダンサーたちの姿が白く浮かび上がる。デレンによる最後の監督作品。
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【マヤ・デレン特集】『鏡の中のマヤ・デレン』
©2001 Navigator Film
- 上映日
- 2019年3月2日(土)14:00
2019年3月3日(日)14:00
2001年/カラー/デジタル/104分
監督・脚本:マルティナ・クドゥラーチェク 音楽:ジョン・ゾーン
出演:アレクサンダー・ハミッド、ジョナス・メカス、スタン・ブラッケージ、キャサリン・ダナム
映画作家のみならず、ダンサーや文化人類学者、詩人など多様な活動で様々なアーティストたちに影響を与え続けているマヤ・デレン。ジョナス・メカスやスタン・ブラッケージなど生前に親交のあった人々の話を交えながら、デレンの謎に包まれた人生を辿る。
【アメリカ・インディペンデント映画特集】『ボーン・イン・フレイムズ』 Born in Flames ≪日本初公開≫
Image Courtesy of Lizzie Borden and Anthology Film Archives, New York. Distributed by Cinenova.
- 上映日
- 2019年3月16日(土)14:00
2019年3月17日(日)14:00 ★
1983年/カラー/Blu-ray/80分
監督:リジー・ボーデン 音楽:レッド・クレイオラ
出演:ジーン・サターフィールド、アデル・バーテイ、ハニー、キャスリン・ビグロー
社会民主主義によって起こされた解放革命から10年後の近未来ニューヨークを舞台にしたSFカルト作品。海賊ラジオ放送のDJや労働者など、ジェンダー、人種、階級を超えた様々な女性たちが連帯し、革命後もなお残る抑圧に対峙する姿をドキュメンタリー的手法で描く。
★「フェミニズム映画講座」開講!
日時: 3月17日(日)『ボーン・イン・フレイムズ』上映後
講師:斉藤綾子(明治学院大学文学部教授)
【アメリカ・インディペンデント映画特集】『特権』 Privilege
提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭
- 上映日
- 2019年3月16日(土)11:00
2019年3月17日(日)11:00
1990年/カラー/16mm/103分
監督:イヴォンヌ・レイナー
女性の更年期にまつわる現実について、医学的・社会学的視点からアプローチした作品。人生半ばにさしかかった女性たちの身体とその感覚に基づく多様な証言を通して、更年期における女性の姿のみならず、性的アイデンティティや社会の経済的不平等問題をあぶり出す。
【アニエス・ヴァルダ特集】『5時から7時までのクレオ』 Cléo de 5 à 7
©agnes varda et enfants 1994
- 上映日
- 2019年3月23日(土)11:00
2019年3月24日(日)14:00
1961年/カラー&モノクロ/DCP/90分
監督:アニエス・ヴァルダ 音楽:ミシェル・ルグラン
出演:コリーヌ・マルシャン、アントワーヌ・ブルセイエ、ドミニク・ダヴレー、ミシェル・ルグラン
夕方5時から7時までの2時間をほぼリアルタイムで展開し、短い時間のうちに浮き沈みする歌手クレオの心のうちを映し出した作品。危機を迎えることによって改めて自分自身の生をつかみ取っていく主人公の姿を瑞々しく描く。
【アニエス・ヴァルダ特集】『幸福(しあわせ)』 Le Bonheur
©agnes varda et enfants 1994
- 上映日
- 2019年3月23日(土)14:00
1964年/カラー/DCP/80分
監督:アニエス・ヴァルダ
出演:ジャン=クロード・ドルオー、クレール・ドルオー、サンドリーヌ・ドルオー、オリヴィエ・ドルオー
大工のフランソワは、妻と2人の子どもと幸せな毎日を送っている。ある日、別の女性に出会い恋に落ちるが、妻のことも心から愛していた。一見平凡な家族の生活やそこに訪れる悲劇と共に、色彩豊かな映像が際立つヴァルダの代表作。
【アニエス・ヴァルダ特集】『ジャック・ドゥミの少年期』 Jacquot de Nantes
©ciné tamaris 1990
- 上映日
- 2019年3月24日(日)11:00
1991年/カラー&モノクロ/DCP/120分
監督:アニエス・ヴァルダ
出演:ジャック・ドゥミ、フィリップ・マロン、ローラン・モニエ
ヴァルダの夫ジャック・ドゥミの少年時代を巡る散文的伝記映画。友達から借りた映写機の体験、屋根裏部屋での映画作りへの目覚めなど、彼の映画人生のはじまりを綴る。最愛の夫に捧ぐ、優しさに包まれた名作。